そんな疑問から2009年、新潟市・上古町商店街で古町糀製造所は生まれました。
元々、銀座でおむすび屋を営んでいた私たちは食材の勉強のために訪れた新潟の蔵で、一杯の糀を飲みお米だけの濃厚な甘さと、糀造りにかかわる方の肌の美しさに驚いたのです。
今でこそ「糀」という言葉を見聞きする機会は増えましたが、当時、「糀?」であり、そして甘酒はどちらかと言えばあまり美味しくない飲み物と思われていました。しかし、糀による米だけで表現できる米だけで表現できる甘さの魅力と、モダンなデザイン表現により古町糀製造所は糀ブームの一翼を担うお店として、全国的に知られることになりました。このことが、私たちが様々な発酵食品に関わる原点となりました。
糀をモダンに表現するその手法に、糀づくりに密接にかかわる酒蔵をやってみないかというお話があり新潟市の沼垂地区にある今代司酒造にかかわることになりました。 沼垂。ここはかつて栗の木川が流れ、交通の便が良いことから川の両岸に酒・味噌・醤油などおよそ50件の醸造蔵が集積しました。今代司酒造もそのひとつ。古くから残る蔵を観光地として整え、 ラベルデザインを新たにし、もちろん酒質の向上などの様々な取り組みをおこなった結果、海外出荷もはじまり、少しずつ動きが活発になってきました。
現代の食生活の変化により、食卓から味噌・漬物がどんどん消えていき、また後継者問題をも抱えていました。
2013年12月。周囲の皆様の応援もあり、
古町糀製造所が後継者としてお引き受けさせていただくこととなりました。峰村醸造には二つの土蔵があり、明治・大正に造られたといわれています。そのひとつを峰村醸造の売店としてリノベーションしてみよう。
そしてもうひとつの蔵に古町糀製造所をいれてみたら、はすむかいにある酒の今代司酒造とあわせて、糀・味噌・酒で地域として醸造を表現する面白い取り組みができるかもしれない。
しかも、江戸・明治・大正と新潟の古を感じる空間とともに。
この地域を、「発酵の街」という従来の言葉で埋もれてしまわないように「醸す地区」と名付けました。
この試みは、新潟における日本酒・味噌という伝統産業の継承と歴史的な建造物を後世へ残すことへとつながっていきました。醸す。糀(麹)を発酵させて、味噌・酒などをつくること。醸しの技術で表現される
可能性をこの地から発信していきたいと思います。
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